こんにちは。和歌山市、南大阪地域で介護技術のセミナー 触れるセミナー 動きのセミナー シンプルラーニング 予防介助専門士養成講座 を行っている 当研究所所長の北口です。(出張講師も受付中です)
このブログを読んでいただけているマニアックな読者ならご存じとは思いますが、
前年から、”予防介助専門士養成講座#に力を入れています。自分としては、介助が必要な人にかかわる立場の人間として、この”予防介助”の考え方は最低限必要と考えているからです。一般的な介助法のような方法論を勉強する前にこの”予防介助”をぜひ学習してもらいたい。
なぜなら、かかわり方で相手様の人生を変えてしまうことができるという介護士冥利に尽きるような認定資格であるからです。勉強して難しいことを暗記したりというわけではありません。
体験しながら、自分や相手の体に起こる変化を体感することで、実際に得た知識を”知る”ことから”使える”ものにしていきます。使えるものでないと意味がありませんし。体験学習から得るのでとっても時間がたつのも早い。
普段から所長が勤務しているサービス付き高齢者向け住宅においてもご利用者様の人生が変わる出来事が何例も起こっています。以前、『人生を変える』というタイトルでブログを書きましたが少し画像を入れてみました。
なので、内容は、前回の内容とほぼ同じですが。
はっきりとは写してはいませんが…体調を崩されて、急性期の病院に入院された時のこと。
入院先の病院で命を助けていただきました。とってもありがたいことであります。私たちも病気になったときは診察をしてもらったり、症状が重度な場合には入院治療が必要であったりします。
しかしながら、入院される方が高齢者であった場合は簡単にはいかない場合が多いです。
命は助かったものの、治療を優先した結果、廃用が進み、動けなくなってしまうというケースも珍しくありません。この方もそのケースの中の一例か。
廃用症候群と昔から言われていますが、病院もかかわっているのです。放置しているわけではありません。介入が遅いわけでもない。でも、典型的な現代風の廃用症候群ですね。(予防介助専門士のコース内では廃用症候群の昔と今についての説明もあります)
はっきりとは写していませんが、排尿が出ないためにカテーテルを留置しています。嚥下テストで危険と判断されてしまったために、鼻腔からチューブで内服薬を注入し、栄養に関してはIVHで首元から注入するためのチューブが出ています。
そして、手が腰のあたりにあるのがお判りでしょうか?
動かせません。一度、鼻腔から留置しているチューブを抜いてしまったために、両上肢をサイドレールに固定されていました。
チューブを抜いてしまったことによる罰ゲームのような...いやいや、仕方ないのです。そうでないと、命が救えません。
病院のことをディスっているわけではありません。病院に入院しないと命を落としていたとも考えられます。
しかしながら本当に固定していた位置で固まってしまっています。
そしてこちらは下半身。
病院では体のほんの表面に少し触れるのみでも『痛い!痛い!』と言われるのでリハビリテーションもできなかった。とのことでした。
和歌山市内では結構有名な急性期の総合病院でしたが…
そして動きがない(動けない?)ことからエアマットを使用しそのうえで両膝は胸の位置まで屈曲した状態で動けない状態になっていました。
命は助かってよかったです。本当に。でもこのままだと命を落としてしまうよりもっとつらい現実が待ち構えています。
この状態で何年も生活しないといけないのです。
予防介助とは、ご本人の動きを引き出す介助法です。このように固まった状態でも人はゴソゴソと動きたいのです。動きを引き出すことで、自分ではどうすることもできない苦しみから解放させることができるのです。
中には、ここまでカチカチになっている人に介助技術を提供したところでどうにもならないのでは?と思ってしまう人もいると思いますが、それが、そうでもありません。
それはなぜそう思われるかというと、
エアマットの上で拘縮が進んでどんどん体が硬くなっていく人を見たことはあると思いますが、その人の体が楽になり、緊張が緩んで手足が伸びて、日常生活動作が改善した状態を見たことがないからなんです。
予防介助を用いた関わりを日常生活の介助で行うことで、この状態から改善することができます。ご本人が徐々に動きを取り戻していってもらえるようなかかわりがあります。
まずは環境調整とポジショニングから行います。
動けない原因となっていたエアマットの使用を中止し、動きを引き出すポジショニングを提供することで、徐々に緊張が抜けます。
緊張が抜けると徐々に動きが少しづつ出てきます。
※マネしないようにお願いします。誰にでも同じポジショニングが当てはまるわけではありませんので。
タオルだらけでわかりにくいですが、すべて意味があって置いています。
予防介助専門士初級コースでは1日がかりでみっちりと勉強します。
足の位置もこの通り。そんなに日数は経っていません。一月位でしょうかね。
毎日関わる中で、ご本人様『もうあかんと思った...』と覚悟されていたそうです。
ちなみにこの方、しっかりと座位が取れるようにまで回復されています。
入院前は歩行器での歩行でしたが…廃用が進んだ状態から、まるっきり元に戻ることって年齢的に難しいですが、
入院して全く動けない状態のまま今後の人生を過ごすのと、車いすに座ることができて、外の空気を吸いに行ける人生となら、どちらが…いや、そんなの比べるまでもないですよね。
この方、当施設で亡くなるつもりで戻られました。そんな状況の中でも、退院したら王将の餃子が食べたいという希望をおっしゃられていました。もちろんその目標も達成(食べれた餃子は王将の餃子ではありませんですが)
介助の質が人生を変える 全く大げさな話ではないのですよね。結果座れなくとも固まったままでいるのと、楽し寝れるのでも予後の過ごし方が全く変わります。
ちなみに所長の北口 無類の食いしん坊なのです。体調が悪い時に嚥下のテストして、それで誤嚥が認められたら、死ぬまで食べられないって、ある意味死刑宣告ですね。
僕なら王将の餃子を食べて死にたいですね。いや、そこにビールを付けたい。
この方、緊張が抜けて動けるようになった結果、拘縮が改善し、餃子のみならずカステラでもおかきでもとろみのないのコーヒーでも食べることができます。
福祉車両があれば、飲食店に食事に出かけることができるのです。エアマットの上で『痛い!痛い!』と硬くなっている状態ではかなえられなかった、当たり前に行うことができる自己実現なのです。
これを人生変わってるといわずして何と言うのか。
予防介助専門士の要請を始めてから1年が経過します。徐々に広がりつつはあります。しかしながら、世の中の介助の方法を変える。概念を根付かせるためにはまだまだ多くの予防介助専門士が必要です。
どんな状態でもかかわり方次第で相手様が動けるようになるという、予防介助という考え方。
みんなで一緒に学んで、苦しんでいる人を解放させてあげましょう。